大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和50年(ネ)2503号 判決 1976年11月30日

控訴人

株式会社ヤナセ埼玉

右代表者

梁瀬次郎

右訴訟代理人

工藤舜達

被控訴人

有限会社 東興産業

右代表者

市川英夫

被控訴人

市川英夫

被控訴人

小櫃靖彦

右三者訴訟代理人

伊藤哲郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

本件割賦販売契約及び連帯保証契約の各成立については、当裁判所も、原審と同様、いずれも有効に成立したものであると認めるので、原判決の理由第二、第三項(判決書六枚目裏七行目から八枚目裏終より二行目まで)をここに引用する。

そこで、控訴人は、本件割賦販売契約は被控訴会社が頭金の支払い等をしなかつたことから昭和四九年一一月三〇日解除されるに至つたため、損害金の約定に基づき、被控訴人らに対して請求の趣旨記載の金員の支払いを求めると主張するので、以下この問題について判断する。

本件割賦販売契約が自動車の販売に係リ、かつ、購入者から代金を二か月以上の期間にわたり、三回以上に分割して受領することを条件とするものであつて、控訴人が自動車の割賦販売を業とする会社であることは、前段引用の原審認定事実に徴して明らかであるから、本件割賦販売契約は割賦販売法にいう割賦販売であり、しかも、控訴人は割賦販売業者であるというべく、また、本件割賦販売契約の解除が自動車引渡前になされたことは、当事者間に争いのないところである。それ故、控訴人の本訴請求については割賦販売法六条の規定が適用され、控訴人が被控訴人らに対して請求しうる損害賠償等の額は、当事者間に損害金の定めがあるとはいえ、その約定に基づいて請求することは許されず、同条三号の定めるところによるべきであるといわなければならない。

右の点につき、控訴人は、本件のごとき新規使用自動車の売買契約が買主の義務不履行によつて解除された場合において売主の被るべき登録による自動車の減価相当額の損害は、売主の義務の履行に伴い当然生ずる通常の損害であり、売主が買主の犠牲において収得する過当な利益ではないのであるから、法六条三号の拡張解釈によるか、同条一号の類推解釈により、控訴人は被控訴人らに対してその賠償を請求することができる、という。

しかし、割賦販売法六条が、割賦販売契約の解除された場合には、「損害賠償の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に掲げる額とこれに対する法定利率による遅延損害金の額とを加算した金額をこえる額の金銭の支払いを購入者に対して請求することができない」と規定しているのは、近年割賦販売が、国民所得の向上と耐久消費財の量産体制の確立とあいまつて、飛躍的発展を遂げ、売主が代金債権確保に急な余り買主に対して不当に不利な約款を強制する弊が顕著となるに至つたことから、一般消費者の利益を保護するために、契約が解除された場合における損害賠償等の範囲について、民法の一般原則の適用を排斥し、専ら、同条の規定によらしむべく、各号所定の金額をこえる部分についての請求を無効とする法旨に出たものである。したがつて、同条の規定は、これを厳格に解釈するのが相当であつて、同条三号にいう「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」には、売主の得べかりし利益のごときはもとより、控訴人主張の登録による自動車の減価相当の損害は含まれないものというべく、また、商品引渡しの行われていないことの明らかな本件事案に対してそれが行なわれていることを前提とする同条一号の規定を類推適用することも、到底、許されないものといわなければならない。それ故、控訴人の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がなく、棄却を免がれない。

よつて、以上と同旨に出て控訴人の請求を棄却した原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法三八四条一項、九五条、八九条を各適用して、主文のとおり判決する。

(渡部吉隆 古川純一 岩佐善巳)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例